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連載コラム~変革リーダーシップの発揮~【第15回】なぜ評価制度の運用がうまくいかないのか?

2022.4.7  変革リーダーシップ

日本では三月決算の会社が際立って多く、新年度を迎えている読者の方も多いでしょう。

人事評価制度を導入されている会社では、半期・一年間の評価時期を迎えることとなります。

弊社では、この人事評価に関するご支援を多く行っている関係で、さまざまな評価制度運用の問題点をうかがいます。

 

なかでも圧倒的に多いのが、評価を受ける被評価者(部下)からの評価者(管理者)に対する不満です。

多い傾向のものを列挙すると、

 

  • 半期・一年間など期間トータルの評価のはずなのに、明らかに評価直近の一~二ヵ月の出来事で評価がなされている。
    評価記録を付けるなどの真摯な姿勢が感じられない。部下の昇給やキャリアを真剣に考えているとは思えない。

  • 評価者によって甘辛が激しく、誰が上司なのかによって昇給・賞与が変わってしまう。明らかに不公平である。

  • 同僚と業務遂行レベルやスキルは差異がないはずであるのに、自分の評価は低い。うちの上司はやはり好き嫌いで評価を付けている。

  • 上司が評価結果を伝え、部下からの納得を得て、評価を高めていくための対話を行う「フィードバック面談」がなされることになっている。
    しかし、納得いく話はなされない。一方的に言いたいことを言われて終了する。なかには、階段ですれ違った際、上司に評価結果を伝えられて面談は行われなかったこともある。(実例です)

 

こうした不満が多く出てきます。

公平な評価を行い、社員の成長・モチベーション喚起を図るはずの制度が、逆に不公平感と会社に対する不信感を生み、目的とかけ離れた運用になっているケースも散見されます。

そこで、さまざまな運用上の問題を解決すべく、評価者研修の依頼を受けます。

具体的には、ハロー効果、期末誤差、逆算化傾向などの評価エラーの注意喚起。評価者の甘辛を修正する評価基準のすり合わせ。フィードバック面談の進め方指導などの実施依頼です。

 

こうした研修で運用上の問題が是正されることも、もちろんあるでしょう。

ただ、評価者研修を一、二回行っただけでは、紹介してきたような運用上の問題は多くのケースにおいて十分に解決されません。

なぜか? 原因がさらに深いところにあるからです。

一つが、評価スキルや面談スキルの問題ではなく、そもそも「評価制度を適切に運用して、部下の成長・モチベーション喚起を図る」という認識が評価者において弱いことにあります。

さらにいえば、管理者としての役割認識が抽象的で、為すべきことが十分に理解・徹底されていないことにあります。

 

この点を踏まえて、二つのことを改善策としてお勧めしています。

一つは、管理者とは「具体的にどのような役割を遂行することが求められるのか?」理解させて、具体的な日常に落とし込ませることです。

 

※弊社で公示している企業規模・業界・職種を問わず、少なくとも求められる16項目

の期待役割を参考までにご覧ください。頁の少し下方向に記載されています。

  管理者パフォーマンス向上プログラム

 

等級基準書が整備されている企業では、それでよいでしょう。

こうした言語化されたものは一、二度見て、あとは管理者の意識の外に置かれていることが多々あります。

このような場合は、主要な役割毎に日常に落とし込ませることをお勧めします。

シンプルにいえば、「適正評価」という役割であれば、手帳の毎月一日の欄に「部下の評価記録実施(三〇分)」と記入します。

こうして手帳に記載され、スケジュール化、仕組み化されていれば実施する確率は高まるでしょう。

このように期待役割を日常業務に落とし込ませて推進させることが必要です。

表現を変えると、管理者としてパフォーマンスの高い人達が行っていることをモデリングさせることです。

 

そしてもう一点は、それこそ人は自分の評価に直結することは真剣に行います。

掘り下げれば、自分の昇進・報酬を高める、逆にいえば自分の管理者としての立場が危うくなることには一生懸命に取り組みます。

そうでないと判断すれば、おざなりの対応に終始します。

具体的な話をすると、経営陣が評価制度の運用レベルを高めることを強く求めることです。

そして人事に反映させることです。

評価制度を適切に運用して、部下育成における成果を上げたものは評価する。そうでないものは評価しない。

この点をわかりやすく衆知させていくことです。

 

評価制度の運用に問題を感じておらるならば、これらのこともご一考くださればと思います。

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Author 執筆者

志水浩

志水浩

株式会社新経営サービス 専務執行役員 統括マネージャー

組織開発・教育研修コンサルタントして30年以上のキャリアを有し、上場企業から中小企業まで幅広い企業の支援を実施中。また、研修・コンサルティングのリピート率は85%以上を誇り、顧客企業・受講生からの信頼は厚い。 弊社、人材・組織開発部門、総責任者。