経済産業省が発刊している2020年度版「ものづくり白書」の冒頭で、
ダイナミック・ケイパビリティ(企業変革能力)
を磨く重要性を訴えています。
これはカリフォルニア大学のビジネススクール教授であるD・J・ティースが提唱しているものです。
企業には大別すると2つの能力が必要である。1つは、通常能力と訳されるオーディナリー・ケイパビリティ。
これは「ものごとを正しく行う能力」といえ、与えられた資源を効率的に運用して利益を最大化する力です。
ベストプラクティス(ある結果を得るのに最も効率のよい技法・活動などを指し、最善慣行とも称される)を見出し、洗練させていくことともいえます。
各々の事業体において、このオーディナリー・ケイパビリティを磨くことが基本ではありますが、当然、企業・事業を取り巻く環境は変化していきます。
この力を突き詰めるだけでは、顧客ニーズ・技術基盤が変わり、商品・ビジネスモデルが陳腐化していけば対応できません。
そこで2つめの能力として、環境変化に応じて企業内外の経営資源を再構成して、自己変革させていくダイナミック・ケイパビリティを高めることが必要となる、というものです。
一言集約して「正しいことを行う能力」ともいわれます。
このダイナミック・ケイパビリティはかみ砕くと、3つの能力に分類されます。
①感知(センシング)・・・脅威・危機を感知する能力
②捕捉(シージング)・・・機会を捉えて、既存の資産・技術・知識を進化させて
競争力を獲得する能力
③変容(トランスフォーミング)
・・・競争力を持続しつづけるために組織全体を刷新し、
変容する能力
この3つの能力を高めることがこれからの時代は問われていくわけですが、当然、最も求められるのは経営陣・管理者層となります。
では、どのようなことを行うことが能力を高めることになるのか?
私はこのような算式が能力向上において成り立つのではないかと考えています。
情報(技術・市場・競合動向などの環境変化情報、内部状況変化など)
×
効果的に考える方法(EXシナリオプランニング、クリティカル・シンキングなど)
×
考える量
そして、そのためにはスケジューリングを行い、継続的・定期的に収集・検討することが肝要であると思います。
具体的には、
- 毎月1日は自社を取り巻く環境変化情報を、さまざまな情報機関・情報誌を調べて収集する
- 第1土曜日は、自社・自部門の事業機会・脅威を考え、先行管理課題(未来を見据えて取り組むべき課題)を検討して、小さな一歩を踏み出すアクションプランを考える
- 月の最終週は、経営技法・フレームワークを学ぶ時間を1時間つくる
といったようなことを取り決め、継続していくことです。
どれだけ多くの経営陣・管理者層が、こうした取り組みを継続的に質高く行えるかが、これからの時代は競争力の差になっていくものと思います。