セミナーや研修で、このようなワークを行います。
ペンとノートを用意いただき、皆さんに「“犬”を書いてください」とお願いします。
すると皆さん、それぞれ思い浮かんだ犬種の絵を描かれていきます。
歩きながら見ていると、見事な絵を描かれる方もおられます。
中には、申し訳ないですが、どう見ても犬には見えない残念な絵を描かれる方もいます(笑)。
一通り描かれた後、周囲の人々と互いに出来栄えを確認してもらいます。
それぞれ感嘆したり、笑いあったりしながらご覧になられます。
そして周りの方々の描かれたものを確認いただいた後、このようにコメントします。
「今、皆さんに“犬”を描いていただきました。ただ、残念ながら誰も私の考えていたことはできていません。」
「私がお願いしていたのは、(ホワイトボードに)
犬
と漢字で書いていただきたかったのです。」
多くの方が笑いながら「騙したな」という表情で私を見られます。
抽象的な指示を出すと、人によって解釈が変わりやすくなり、思い描いた動きをしてくれないことを確認するためにこのワークを用います。
話は変わりますが、小学生低学年を対象とした塾講師の方の話を紹介します。
担当しているクラスの子供の中で、何度言っても挨拶がきちんとできない子が何名かいたそうです。
再三、教室に入って来た際に「挨拶をきちんとしなさい」と指導するものの変わらない日々が続きました。
どうしたものか?悩んでいると、ふと、このような思いが湧いてきました。
「きちんとした挨拶をしないのではなく、そもそも、きちんとした挨拶とは何か?わかっていないのではないか?」
そして翌日、挨拶ができない子供達を授業後に残して確認します。
すると案の定、やる気がないわけではなく、やり方がわかっていない状況でした。
このことを確認した先生は、子供達にかみ砕いてきちんとした挨拶を教えます。
・教室に入ったら、床にテープが貼ってある所まで来て立ち止まる
・次に両手を太腿の横につけて
・先生の目を見て
・「こんにちは」と言う
・その後に、腰から上を前に30度ぐらい倒してお辞儀をする
・視線は、相手の足元より少し手前をみる
抽象的な指示をするのではなく、かみ砕いた具体的な指示を行うことを「行動的翻訳」
といいます。
先生が、子供達も理解できる行動的翻訳を行った結果、翌日から全ての子供がきちんとした挨拶ができるようになったとのことです。
コミュニケーションの要諦は、相手の世界(有している情報量・知見・精神状態など)に入り、それに応じて適切に伝え、聴くことです。
・営業パーソンに「お客様の目線で、感情移入して対応しなさい」
・生産メンバーに「次工程のことを考えて仕事をしなさい」
・管理者に「部下育成をきちんとしなさい」
といっても思うように動いてくれないと感じている場合、相手視点で考え、伝達を見直していくのが一つの処方箋かもしれません。