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連載コラム~変革リーダーシップの発揮~【第17回】問題意識が未来を約束する

2022.6.17  変革リーダーシップ

多くの方は、仕事・プライベート問わず、一日に数回は何かの問題を感じるのではないでしょうか。

では、われわれはどうして問題を感じるのか?

 

まず、問題という言葉の定義を確認しておきましょう。

算数のように絶対的な答えがあるわけではありませんが、問題とは「目標(あるべき姿)と現状のギャップであり、解決を要する事柄」という定義があります。

 

話を戻すと、皆さん一人や二人は部下に対して問題を感じていると思います。

なぜこのように感じるのでしょう。

 

われわれは無自覚的なことが多いですが、一人ひとりの部下に対して年齢や経験などから、このような“あるべき姿”を設定しています。

「知見・技術レベルは〇〇程度あり、活動は××レベルのことは独力で遂行できる。判断も△△ぐらいのことは正しくできる」といったようにです。

そして、この“あるべき姿”とマイナスの方向で大きなギャップがある部下に対して「こいつ問題だ!」と感じるわけです。

 

これが問題の定義ですが、問題には種類があります。

三種類派と四種類派にわかれていますが、ここでは三種類で考えます。

 

一つが「発生型問題」。これは逸脱や未達に関する問題です。

具体的にいえばミス・クレーム・事故があたります。こうした、一言でいえばトラブルは“あるべき姿”から逸脱しています。よってカテゴリーとしては「発生型問題」に入ります。

また、営業パーソンが目標予算未達であれば問題を感じます。これは目標予算達成という“あるべき姿”に対して未達ゆえに感じることです。

こうした問題も発生型問題のカテゴリーに入ります。

 

二つ目は「向上型問題」と私どもでは表現しているものです。

これは目標と現状が同じレベルの状態の際、言い換えると問題がないときに、目標レベルを高めたり、追加して意図的に創り出す問題です。改善・強化に関する問題といえます。

例えるならこのようなことです。

 

〇〇業務は、定められた手順に則って作業を行い二時間かけて完了している。これをもっと短時間でできないのか?二五%削減して、一時間半で行うことが可能ではないのか?

 

この場合、目標レベルを一時間半に引き上げると、現状二時間要しているので三十分のギャップが生まれます。この三十分が「向上型問題」です。

そして、他者の知恵も借りながら試行錯誤を繰り返して、たとえば数か月後、一時間半でできる状態にしていく。これが「向上型問題」を見つけて解決するということになります。

表現を変えると問題がない状態のときに、あえて目標レベルを引き上げたり、追加することで意図的にギャップ・問題をつくり出し、よりよくなる活動を行っていくこととなります。

 

最後が「未来型問題」です。

これは二つの切り口、リスク回避と機会開発に関する問題です。

シンプルにいえば、今はそう問題はなくマイナスの影響はありません。ただ、半年先、二年先、五年先このままの流れで推移すれば、おそらく大きな問題となって現れるであろうことです。

地球単位でいえば地球温暖化があたります。日本でいえば少子高齢化でしょう。

会社単位や部門・個人単位で考えればさまざま出てくるでしょう。

 

こうしたマイナスの問題が理想的にいえば起きないようにしていく。起きたとしても耐えうる状況をつくるために着実に問題解決の手立てを講じていく。これが一つは「未来型問題」を見つけて解決に動くということです。

この「未来型問題」はポジティブな側面もあります。自社が有している技術シーズ。これがある分野において主流の技術になる可能性が高い。その技術の開発を前倒しで進めて先行者利益を獲得する。将来のチャンスを獲得するために確実に手立てを講じていくことも含まれます。

 

よく「問題意識を持ちなさい」ということをいいます。

これは具体的にいえば、目標レベルを高めて問題を創り出す「向上型問題」。そして、将来のことを考えてネガティブ要素・ポジティブ要素の双方に対して先手を打つ「未来型問題」。この二つのことを指しています。

 

「VUCAワールド」「第4次産業革命」と称される、環境変化のスピードが速く、不確実性の高い時代に入っています。

経産省・厚労省・文科省の三省合同で発刊された「ものづくり白書」で紹介され、一部上場の企業でも、数名の零細企業でも、その力を身に付けられるかが企業経営の成否を分けるといわれているのは

 

ダイナミック・ケイパビリティ(企業変革力)

 

であるといわれています。

補足すると、私はこのように捉えています。

 

「環境変化を先読みして、自律的・継続的に自己変革を“当たり前のように”行いつづける能力」

 

この力を高めるのは、もちろんさまざまな要素がある訳ですが、一つは、社員一人ひとりがそれぞれの責任範囲において、「向上型問題」「未来型問題」を導き出し解決に動いていく。この思考・活動が能力を高めます。

リーダーとして、部下の問題意識と活動を高める働きかけが、これからの時代はより重要になっていきます。

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Author 執筆者

志水浩

志水浩

株式会社新経営サービス 専務執行役員 統括マネージャー

組織開発・教育研修コンサルタントして30年以上のキャリアを有し、上場企業から中小企業まで幅広い企業の支援を実施中。また、研修・コンサルティングのリピート率は85%以上を誇り、顧客企業・受講生からの信頼は厚い。 弊社、人材・組織開発部門、総責任者。