■ミハエル・シューマッハが隠れて行っていたこと
ドイツ人の元F1ドライバーに、ミハエル・シューマッハという方がいます。
ドイツ人初のF1ドライバーズチャンピオンで、優勝91回、チャンピオン獲得7度などF1の主要な記録を塗り替えた伝説の選手です。
そんなシューマッハがキャリアの中盤、フェラーリに移籍した時の話です。移籍当初、シューマッハとチームのメンバーは良い関係ではありませんでした。陽気なイタリア人であるメンバー達は、仕事帰りによく飲みに行っていました。
シューマッハにも声をかけていましたが、何度誘っても断われたことから、プライドの高い名門フェラーリのメンバー達は「これだからお堅いドイツ人は・・・」等と言い、飲みに誘わないだけでなく、仕事中シューマッハに声をかけることも減っていきました。
また、シューマッハは奇妙な行動をとっていました。毎日、夜遅くまで続くミーティングが終わると、家に帰らず、ドイツから持ち込んだ謎の一台のトレーラーに乗り込むのです。
「一体、シューマッハはひとりで、トレーラーの中で何をしているのか?」
ある日、不思議に思った一人のスタッフが無理やりトレーラーに押し入りました。 「お前はいつもそこで何をしているんだ?見せろ!」
すると、トレーラーの中には、トレーニングマシーンがずらりと並んでいました。シューマッハは、ミーティングの後、ひとりで黙々と体を鍛えていたのです。
「なんで毎日こんな遅くまでトレーニングをしているんだ?」
そう聞かれた、シューマッハはこう言いました。
「決まっているだろう。フェラーリを世界一にするためさ」
■何がチームメンバーの心を動かすのか
それを知ったチームメンバー達は変わりました。「何が何でも、シューマッハを世界一にしよう」を合言葉に、チーム一丸となったのです。
それは、レーシングチームだけにとどまらず、フェラーリ全社員にもおよびました。皆が、「シューマッハとフェラーリを世界一にしよう」という文字と、シューマッハの写真を机の前に貼って応援し出したのです。
その4年後、シューマッハとフェラーリは世界一になりました。
フェラーリにとって、21年ぶりの世界一です。
チームメンバーを動かすために、リーダーはよくアメとムチを使ったりします。しかし、まずは自身が本気になって取り組む姿を見せることが、メンバーを動かすうえで最も重要なのではないでしょうか。
シューマッハ選手の一日も早いご回復を心よりお祈りしています。