表題の言葉は、日本でもミリオンセラーの児童文学書となった、サン=テグジュペリの「星の王子さま」の有名な一説ですね。
主人公の王子さまが、旅の途中で出会ったキツネから教わる名言です。
そして、この言葉は、我々企業の人材開発・組織開発の分野においても重要な言葉です。
“成果は行動の影”と言われるように、行動の質×量が成果を生んでいきます。
では、質的にも量的にも望ましい行動を続けるには何が必要か?
やはり、目に見えない心理面が重要な要素となります。
・粘り強く成果につながる行動を取り続ける「モチベーション」
・障害、困難が生じても、努力を継続して、壁を乗り越えていく要素となる「自己効力感(自己信頼)」
そして、成果を上げ続けていくために、もう一つ、目には見えない心理要素があります。
まず、少し切り口を変えてお話すると、
人は「見たことを信じる」のではなく、実際には「信じていることが見える」
という言葉があります。
サンプルで補足をすると、ある役員の方が一人の部下である管理職Aさんに対して、
■管理職Aさんが部下と対話するのが少ない。
と感じたとしてください。
そして、その事実から
■彼は人への関心が薄い。。。
という解釈になり、
■管理職には、あまり向いていないかもしれない。
という認識に至ったと考えてください。
この話、これだけ見ていると、捉え方として大きな問題はないように思われます。
ただ、この管理職の方が、いつでも、他の誰から見ても、部下とコミュニケーションを取ることが少なく、指導・支援が不充分であるならば、
「人への関心が薄く、管理職には向いていない。」
ということは筋が通ります。
しかし、人は筋道立てて論理的に物事を考えるよりも、
メンタルモデル(過去の経験から、心の奥深くで固定化された無意識の見方・考え方)
ありきで、その考えに沿った情報を採用して、必ずしも事実とは限らない結論を出すことが多くあります。
もう一度、同様のサンプルで考えると、役員が、
■彼(Aさん)は人への関心が薄い。
というメンタルモデルを有している。
その前提がある中で、役員が
■管理職Aさんが、部下とあまり話をしない場面に何度か居合わせた。
その結果、有していたメンタルモデルが検証・強化され、
■管理職には向いていない。
という必ずしも正しいとは限らない結論に至った。
多角的に情報を集め、論理的・合理的に考えて意思決定・結論を導き出していく。このような思考をするのではなく、メンタルモデルありきで、それに沿った・それに合った情報を見つけて、よりメンタルモデルを強固なものにしていく。そうした性向が人にはあります。
特に、この傾向は、経験を積んだ人間ほど陥りやすく、上位者であるならば、間違った意思決定・判断につながり、個人レベルだけでなく、マネジメント範囲全般のパフォーマンスに悪影響を及ぼします。
あまり語られないことではありますが、メンタルモデルを見直し、書き換えるべきものは変えていく。また、良い意味で先入観なく物事を観ていくことが、上位者のセルフマネジメント要素としては大きいものであると考えています。