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連載コラム~組織の潜在能力を引き出すために~【第11回】制約を外す

2019.6.4  組織開発

 

ある顧客企業の管理部門長の方に伺ったお話です。

その会社では、ホームページのリニューアルが検討され、抜本的改定を図ることになられました。

既存の発想に囚われない、ユニークなアイデアを基にリニューアルするために、各部門から評価の高い若手社員を選抜して、プロジェクトが結成されました。

まずは、アクセスデータ解析、ユーザー・ヒアリング、競合ページ調査など、いわゆる3C(顧客・競合・自社)分析を経てリニューアル計画が策定され、管理部門長の承認後、プロジェクトが本格的に動いていきました。

 

ただ、プロジェクトが稼働して2カ月程が経過した時です。営業部門から、今回のリニューアル計画に対して変更依頼が出てきました。

管理部門長は、営業部門長に確認をとって計画を進めていたのですが、営業部門内でコミュニケーションがうまく取れておらず、現場から意見の反映を求められたようです。

致し方なく、主要なプロジェクト・メンバーが、現場の営業部門メンバーのヒアリングを行い、意見を反映することになりました。

結果、コンテンツ内容を3割程度変更することになったそうです。

そして、この営業部門との調整を終えたあたりから、管理部門長から見て、プロジェクトが明らかにおかしくなりました。

プロジェクト・メンバーから出てくるコンテンツ改定アイデアが、現在のページと大差ないものであったり、競合他社のコンテンツの焼き直しばかりだったそうです。

今回は、抜本的な改訂を行うために、優秀かつ頭の柔らかい若手社員を集めてプロジェクトを組んでいます。

また、当初のリニューアル計画の会議を覗いた際には、期待通り、ユニークなアイデア溢れる対話がなされていました。

しかし今、目の前に提示された内容は保守的なものばかりで、リニューアルのコンセプトとはかけ離れたものになっています。

「どうして、こんな状況に陥ってしまったのか?」プロジェクトで何が起きているのかを探るため、プロジェクト会議に参加することにされました。

 

参加してみると、やはり以前とは雰囲気が違います。メンバーの発言量も少なく、全員に良い意味での遊び心が感じられず、まるで業績の悪い時の営業会議のようでした。

会議の進行を行っているプロジェクト・リーダーも、メンバーの意見を十分に聞こうとせず、とにかく議事を前に進めることに重きを置いていました。

そして会議が終了する前のことです。最後にプロジェクト・リーダーが以下のようなまとめのコメントを始めました。

「とにかく時間がありません。各自、実務もおありでしょうが、役割分担された作業を優先して進めてください・・・」

このコメントを聞いた時、全ての謎が解けたそうです。

プロジェクト・メンバーは、「納期」という呪縛に縛られてしまっていたため、コンテンツ・アイデアが陳腐化していたのです。

 

この会社は、仕事の納期遵守が、社員共通の価値観として強く根付いていました。

今回も、納期が全てに優先するものという呪縛がかかり、品質レベルは後回しになっていったようです。

ただ、プロジェクト・オーナーである管理部門長からすれば、顧客からの納期要請がある仕事ではありません。また、社内的にも絶対に納期を守らなければならない訳でもありません。

それよりも、既存の発想に囚われない、ユニークな改定を図ることが重要です。

そこで、前述の会議におけるプロジェクト・リーダーのまとめコメントが終わった後、

縛られていた納期遵守という「制約」を外す

ことを行われました。

結果、憑き物が落ちたようにメンバーの表情が変わり、その場が安堵感に包まれたそうです。

部下・チームのパフォーマンスが上がらない原因として、何らかの制約に縛られて発想や行動に問題を生じさせている場合があります。

本人達が縛られている目標や社内常識などの制約を探り、外していくことが、上位者が行う支援の一つであろうと思います。

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Author 執筆者

志水浩

志水浩

株式会社新経営サービス 専務執行役員 統括マネージャー

組織開発・教育研修コンサルタントして30年以上のキャリアを有し、上場企業から中小企業まで幅広い企業の支援を実施中。また、研修・コンサルティングのリピート率は85%以上を誇り、顧客企業・受講生からの信頼は厚い。 弊社、人材・組織開発部門、総責任者。