ノーベル文学賞作家のアルベール・カミュの代表作である小説「ペスト」。今、コロナウイルス禍のヨーロッパでベストセラーとなり多くの人に読まれているそうです。
ご承知の通り、中世ヨーロッパで人口の30%以上が亡くなったペストに見舞われた人々を題材にした内容です。
アルジェリアの港湾都市であるオランにペスト患者が現れます。しかし、現実を直視せず楽観論に走る人々、後手に回る行政対応の結果、瞬く間に感染が広がります。フランスの植民地でもあったゆえに、都市はロックダウン(封鎖)されます。
オランの人々は外界から遮断された中、日々、増え続ける死者を前にして何の手立ても講じられず、絶望的な日々を過ごしていきます。
この困難な状況下で、ある一人の医師とその仲間たちがペストとの闘いを始めていく、というストーリーです。
まさに今の状況と酷似した作品で、現実に起きていることと同じようなエピソードが多く描かれていて、予言していたかのようです。
このペストに最も現れていますが、「人間には不条理・理不尽としかいえない状況が襲うことが生じる。その出来事に向き合い、生きていく道を探り、自らの価値観に沿って抗いつづけることが大切である。」カミュは、こうした『不条理の哲学』という思想を世に問うています。
アメリカの心理学者アルバート・エリスが提唱した論理療法(心理療法の一種)の中心概念に「ABC理論」というものがあります。「出来事が、直接的に人の心理を決めるのではない。解釈の仕方によって生じる感情や思考が変わり、結果、その人の行動が変わる」というものです。
シンプルにまとめると以下のようになります。
A:出来事(Activating event)
⇓
B:解釈・受け止め方(Belief)
⇓
C:生じる感情・思考・行動(Consequence)
補足すれば、同じ場所で同じ経験をしても、人はそれぞれ受け止め方が違うので、ある人はやる気になり、ある人は落ち込むといった違う感情・思考となる。結果、建設的な行動をとる人もいれば、嘆き・悲しむだけの人も出てくるということを述べています。
表現を変えると、
B:解釈・受け止め方(Belief)
をいかにプラスの方向にコントロールする習慣をもつか?ということを問うています。
今は、この一言でいえば「解釈力」を、我々一人ひとりが磨くときといえます。
我が国は弥生時代から一貫して人口が伸び続けてきました。
しかし、ご承知の通り、近代文明が経験したことのない急激なペースで人口減少社会を迎えていきます。人口増を前提とした、年金や保険に代表されるさまざまな社会・経済モデルは変わらざるを得ません。
そして、現在、脚光を浴びているAI・IoTなどに代表されるデジタル変革の入口に入っています。
多くの企業でビジネスモデルの転換が求められます。一人ひとりのマインドセット(過去の経験から培ってきた物事の見方・考え方)の改善・進化が求められる状況です。
100年先の歴史の教科書では、この令和の時代を社会の分岐点と教えていることでしょう。
ただ、人間は保守的な生き物です。人口減少社会の到来、デジタル変革がなされていくといっても、今がそれなりに満たされていれば自己変容する行動はとれないものです。
いわゆる「ゆでガエル現象」を起こしやすくなります。水を張った鍋にカエルを入れて徐々に温度を上げていくと、カエルは温度変化に気づかず茹で上がって死んでしまうという話ですね。
そういう意味では、このコロナウイルス禍はプラスの方向に解釈をすれば、人々がこれから迎える環境変化に向き合い、マインドセットを改善・進化させ自己変容していく機会となります。
大変な被害が生じて他責や自責の心理に苛まれたり、ショックで思考停止に陥りそうになりますが、自己変容が求められていた時期に、行動を本気で起こすきっかけを与えられたともとれます。
「3秒でハッピーになる名言セラピー」はじめ多くの自己啓発本を上梓されている、ひすいこたろうさん。
2008年のリーマンショック後に、“あめあめふれふれ”から始まる童謡「雨降り」の替え歌を発表しました。
“ぴちぴちちゃぷちゃぷらんらんらん”の歌詞をもじった、このようなものです。
“ピンチ、ピンチ、チャンス、チャンス、ラン、ラン、ラン”
私自身、アフターコロナの世界で活躍できる準備をしていこうと考えています。