仕事柄、さまざまな企業の中期経営計画を拝見します。そのなかで、こんなことが多々あります。
計画書に書かれている、環境分析、成功要因の抽出、事業ドメイン(領域)選定・戦略案などは客観的にみて的を射ています。
この通り進めていれば、業績は向上しているはずです。
しかし現実の業績は横這いです。場合によっては下がっている企業もあります。
なぜでしょうか?
答えはいたってシンプル。実行していないからです。絵に描いた餅の状態になっているのが要因です。
では、どうしてこのような状況に陥るのか? まずは、一つの企業事例をご紹介しましょう。
ある企業の社長が、地方の営業所に訪問して、何名かの営業マンと個別に話をする機会がありました。
話を聞いていくと、将来を見据えて経営計画に盛り込んだ営業政策の実行が不十分な状態でした。
重点ターゲットとして明示した先への訪問量が少なく、拡販を目指している新規商品のPRも充分にできていませんでした。
これに危機感をもった社長が、経営企画部門のメンバーに手分けをさせて、全ての営業マンの活動内容を分析・聞き取りをさせていくと、地方の営業所だけでなく本社営業部も含めて同様の傾向にありました。
全員が、経営計画書は見ていて、内容も理解しているはずです。
計画書を策定した社長始め経営陣に反発しているわけでもなさそうです。
本質的な原因は、以下のようなことでした。
一人ひとりの営業マンはもとより、マネジメントに近い立場にある営業所長においても、この経営計画に記載されている営業政策の意義が見出せていないことにありました。
その結果、即効性が低く、慣れない仕事をするよりも、目の前の業績があがりやすい顧客・見込客を訪問して、売りやすい商品の拡販に走っていたということです。
人は、他の動物と違って意味を求める動物です。
そのことに意味が感じられれば、障害や困難があっても、それを乗り越える努力を継続していきます。
逆に意味が感じられなければ、いくら上位者から強制されても、実行するスキルをもっていてもモチベーション高くは動きません。
人には“意味づけ”が必要なのです。
私たちは、方針を打ち出す際、WHAT(何を)とHOW(どんな方法で)は語り、記載します。
しかし、思うように動いてもらうには、
WHAT(何を)・HOW(どんな方法で)+WHY(なぜ行うのか)
が必要です。
方針の浸透、WHYの理解を促す方法として、「インテグレーション・ワーク」というものをお薦めするケースがあります。
インテグレーションとは、「融合」「統合」という意味です。
具体的には、「経営陣の方針や事業運営に対する想い、その実現に向けた方向性について、参加者全員で対話形式(ダイアログ)のコミュニケーションを用いて語り合うことで、方針理解・腹落ちを促す」こととなります。
具体的な内容は次回のコラムでご紹介します。