組織の課題を掴むために、経営者から新入社員まで数十名程度の方をピックアップいただき、インタビューを行うことがあります。
その際、以下のようなケースが一定レベル出てきます。
管理者層に話を聞くと、
「部下が指示待ちで受身体質である。」
「自発的な意見や行動が出てこない。」
「望ましくないのだが、結果的に、どうしても指示・命令が増えざるを得ない。」
逆に部下である一般社員層に話を聞くと、
「意見を言っても聞く耳を持たない。」
「自分の考えを押し付けるばかりである。」
「結果、“言われたことをやるだけ”といった諦め感が部署内に漂っている。」
一言でまとめると、
『互いに、相手が言わないから・聞かないから、致し方なく本来あるべき姿とは違う行動をしている』
という話をされます。
どうして、このような状況に陥ったのかを尋ねると、管理者の方々は、
「過去、何度も意見を求めたが出てこなかった。」
「たまに意見が出てきても、的外れなもので採用することができなかった。」
「ビジネスの世界で結果を出すためには、部下から的を射た意見が出てくるのを待っていられない。」
だから、こうした状況になっていると言われます。
部下の皆さんは、
「何度も意見は言ったが却下されるばかりであった。」
「上司が思い描く“答え”に当てはまらないと聞いてもらえない。」
「だから、意見具申や提言をしても無駄なので言わなくなったのだ。」
と仰います。
どちらか一方が悪いというような話ではなく、上司・部下それぞれの立場で考えると双方の言い分に理があります。
ただ、互いに本来は決して望ましい状態ではないと考えられています。残念な状況と言わざるを得ません。
心理学の世界に、
ラベリング
という言葉があります。
これは、身近な人物に対して生じやすい現象です。
過去のコミュニケーションの中で、何度か同じ結論を聞いた・至ったことで、
「この人が、〇〇のテーマを語りだしたら答えは××だ。」
「△△については、この人は意見を持っていない。」
といったように、相手に対して固定観念を持ってしまう、ラベル・レッテルを貼り付けてしまう現象を言います。
先程の上司・部下の関係も、過去の経験則から強いラベリング現象が生じているものと思われます。
時間を経て、今は部下も知見が深まり成長しているかもしれません。
上司は、マネジメント経験を経て、多角的に物事を考えることができるようになっており、持論とは違う意見を受容する心の余裕が生まれているかもしれません。
意外と対話をすれば、互いに対して持っている固定観念があっさり溶けていくことも考えられます。
もしも、同じように上司・部下・他部署の人達にラベリングを行っているとお感じのケースがある場合、ラベルを剥がして接してみてはいかがでしょうか。