■心理的安全性という言葉への誤解
先日、ある会社で管理職研修をしていた時の話です。
私が「部下が望ましくない行動をしていた場合、放置するのではなく、タイムリーに指導をしないといけない」という趣旨の話をした後、参加者である一人の次長がこう言われました。
「最近、Googleが“心理的安全性”が大事と言っているのをネットで見たこともあり、なかなか部下に対して指摘ができない」と。
(“心理的安全性”については、第5回「チームの生産性を高めるために」をご覧ください)
この次長の発言を聞き、“心理的安全性”という言葉が、少し違う意味で解釈されているのかもしれないと思いました。
「心理的安全性」という言葉を聞いて多くの人々は、
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メンバー同士が仲良くすること
批判や否定がない場
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等をイメージするのではないでしょうか。
しかし、「心理的安全性」というのは仲良しクラブや、ぬるま湯の関係のことではありません。
■心理的安全性とは何か
この言葉はもともと今から20年くらい前に、ハーバード大学のエドモンドソン教授が、組織論(チーム研究)の中で用いた概念です。
この論文の中で“心理的安全性”とは、「『このチームでもしリスクをとった(≒チャレンジした)としても、対人関係上で亀裂や破壊がおこらないであろう』という、チームに共有された信念」 としています。
つまり、目標に向かってチャレンジしていくことが求められる職場の中で、それぞれが失敗しそうになることもあるけれども、それでもお互いに失敗を責めずに、さらなるチャレンジを促進していこう、ということです。
また、例えばチームの会議であるメンバーが、皆とは違う意見を述べたとしても、それに対して「何を今さら違うことを言いだすんだ」とか「そんなの出来るわけないだろう」等と感情的に批判せずに、きちんと意見を受け止め、議論しようということです。
こうしてみると、冒頭の次長の発言が、本来の“心理的安全性”の趣旨とは異なっているのが分かります。つまり、“相手や場を気にして発言しない”ではなく、“相手や場を気にせず発言できる”という関係性をつくることです。
そのためには、リーダーがきちんと目指すチーム像やルールを提示するとともに、メンバーが何を言おうとまずは受け止めることを率先垂範していく必要があります。
これは、本コラムの第3回「チームの成長を促す」で述べた、【第1段階】形成期から【第2段階】混乱期に移行し、メンバーが本音で話ができるようになるためにも必要なことですので、是非チャレンジしてみてください。