第4次産業革命、VUCAワールド、DX・・・今、ビジネスの一線に身を置く者すべてにとって、かつて経験したことのない環境変化が起き始めています。
本コラムでは、この歴史的なビジネス環境の変化に適応していくため、
・いかに変革リーダーシップを発揮していくべきか?
・会社の変革をリードする人材を育成するには、何をすべきなのか?
この二点に着目して著述を進めていきます。
私も近年、老眼になり“かける側”になりましたが、世の中にはメガネをかけている人とかけていない人がいます。
ただ、物理的にはかける人とかけない人がいるわけですが、誰しも心には、形やレンズの厚さは違うもののメガネをかけているのではないかと思います。
具体例でお話すると、例えば血液型です。我々は、大なり小なり人の個性傾向を血液型で判断する傾向があります。
A型は、繊細で几帳面。B型は良くも悪くも自分勝手で細かいことは気にしない。O型はおおらかで楽天的、などのようにです。
ただ、私も最近知ったのですが、この血液型で個性判断をしているのは世界的にみれば日本人ぐらいだそうです。(過去に日本の影響を受けた韓国・台湾で一部あるようですが)
実際、自分に当てはめて考えると、私は父がO型、母がAB型、妹がB型、そして私がA型で家族全員違う血液型でした。
B型は良くも悪くも自分勝手で細かいことは気にしない、ということが血液型診断の資料を見ていると大体出てくるのですが、B型の私の妹は真逆の性格です。
自分勝手なところはあまり感じません。繊細であるといわれるA型の私と比較しても、かなり細かいことを気にします。
よくよく考えると、さまざま言われていることとは随分と違います。
こうした血液型の個性判断のように、何らかの固定観念・思い込みを基にして、人や物事を実態とは違った形でみて判断を誤る現象を「認知バイアス」と称します。
端的に表現すると以下のようになります。
認知バイアス・・・無意識の思考・判断の偏り、歪み
この認知バイアスは、さまざまな種類に分けられますが、なかでも多く発生するのが、
確証バイアス
です。
このバイアスは、先入観や願望を補完・強化する情報に焦点があたり、逆に先入観や願望に合わない情報は耳に入らない現象を指します。
例えば、ある管理者が、何らかのきっかけで一人の部下を「こいつはダメだ」と思ってしまうと、客観的にみると長所もあり、好ましい言動もしているのですが、問題点・芳しくない言動ばかりに意識が向いてしまい、どんどん「ダメな奴だ」という評価を強化させていく。
逆に、「〇〇施策が良い」と考えると、その施策の良さを補完・強化する情報しか目に留まらない・耳に入らない状態になる。
人は、「見たものを信じるのではなく、信じているものが見える」といいますが、確証バイアスは誰しもが無意識的に生じさせてしまいます。
ビジネス環境が大きく変わるときには、この確証バイアスが成長の足枷となり、場合によっては致命傷を負う基となります。
具体的には、環境変化はしているものの過去の成功体験が足枷となり、旧来の考え方を変えられない「サクセス・トラップ」といわれる状態に陥ることです。
これまで成功に導いてきた事業・方法がこれからも機能することを裏付ける情報だけを耳に入れ、不都合な情報は耳に入れない状態に経営陣・社員が陥ってしまうということです。
2012年に破綻した、写真フイルムメーカーのコダックの事例がまさに当てはまります。デジタル化の波が急激に進んでいるにも関わらず、大口株主・経営陣が成功体験にこだわる確証バイアスを有していたのが原因です。
人間は保守的なものであり、慣れ親しみ自分達に成功をもたらしたものを手放すことは心理的に難しいものではあります。
しかしながら、数年前にトヨタ自動車の豊田社長が「百年に一度の大変革期である」と述べていたことが、多くの企業において他人事ではない状況になりつつあります。
内なる成功体験を肯定する確証バイアスと戦い、会社レベルであれば、事業・ビジネスモデル・商品。個人レベルであれば、これまで培ってきたスキル・知識。
こうした資産と冷徹に向き合い、変えるべきものは変え、捨てるべきものは捨て、新しい挑戦を行う。
こうした心の姿勢を自分だけではなく、上下左右の多くの人達に促すことが、変革を導くリーダーに求められることではないかと思います。