■ある人事担当者の悩み
先日、私が所属している人事関係者の集まりで、
「うちは、入退社が多くて大変なので、何か良い人事管理システムはないでしょうか・・・」
という悩みを聞きました。
その後、「○○社のタレントマネジメントシステムは使いやすい」、「○○社のものは△△機能が便利」等の会話がなされていましたが、私は少し違和感を覚えました。
たしかに、入社や退職の手続きが多いと大変なのでしょうが、人事としては人事管理システムを導入して業務を効率化することよりも、退職が多い原因を突き止め、解決することの方が重要なのではないでしょうか。
■中途人材を定着させるために
「オンボーディング」という言葉があります。
直訳すると「船や飛行機に乗っている」という意味であり、それを会社に例えて、会社という乗り物に新しく加わった個人を同じ船(会社)の乗組員として馴染ませ、一人前にしていくプロセスのことを意味します。
例えば、入社1ヵ月以内の導入研修や、メンバーとのランチや飲み会等の歓迎イベント、メンター制度、人事と入社者の定期面談等がそれに当たります。
甲南大学経営学部の尾形教授の調査によると、日本企業では新卒採用者に対するオンボーディング施策は充実しているものの、中途採用者に対するオンボーディング施策はあまり実施されておらず、サポートが希薄になっているという実態があります。
ではなぜ、新卒と比べて中途採用者へのサポートは希薄なのでしょうか。
同調査によるとその理由は、
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1位:予算や人員が足りないから
2位:何から取り組めば良いかわからないから
3位:トップ(経営)がその重要性を理解していないから
4位:現場の理解や協力が得られないから
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となっています。
2位の「何から取り組めば良いか分からないから」は別として、1位の「予算や人員が足りないから」も、4位の「現場の理解や協力が得られないから」も、結局はトップが重要性を理解し、予算を与えたり現場に指示を出したりすれば解決する問題です。
つまり、トップが「中途採用者の定着は組織の重要課題である」との認識を持つことが、オンボーディングを充実させる第一歩であると言えるでしょう。
中途採用者は、新卒と違って、周囲から短期間で成果を出すことが求められます。
そして、その期待に応えられずに辞めていくケースも多々あります。
しかし、前回のコラムで記載したように、仕事で成果を出すための「Know How」を得るには、まずは「Know Who」を得る必要があります。
新卒入社者の場合は同期がいたり、入社前から人事や先輩との交流があったりと、その「Know Who」が得やすい状況にあります。
一方で、中途採用者はそれらが乏しい状態から、自ら人的ネットワークを広げていかなければならない状態となり、新卒以上に人事としてのサポートが必要です。
中途採用者の定着や活躍に課題がありましたら、まずはトップの号令の下、オンボーディング施策の拡充に取り組んでみて下さい。