■ある友人の苦悩
先日、小売業の会社でエリアマネージャー (複数の店舗をマネジメントする役職) を任されている友人から、以下のような話を聞きました。
「最近新しく担当した店舗があるんだけど、他店よりもかなり離職者が多くて、業績もちょっとずつ下がってるんだよね。。。」
「スタッフ同士のコミュニケーションも少ないし、部署間の協力も少なそうなので、朝礼を始めたり、飲み会を増やしたり、サンクスメールを送り合う仕組みを導入したりしてみたんだけど、全然変わらなくて、どうしたら良いんだろう・・・」
■問題には2つの側面がある
朝礼も、サンクスメールも、手法そのものが悪いわけではありません。しかし、それらを導入して取り組むことで問題が解決する場合と、解決しない場合とがあります。
リーダーシップの研究者であるロナルド・ハイフェッツは、世の中で起こる問題には「技術的問題」と「適応を要する課題」(以下、適応課題)があると主張しました。
「技術的問題」とは、モノや機械の故障、開発した試作機が上手く動かない、個人のスキル不足等の問題です。
モノや機械のトラブル等の問題は、原因を把握することができれば、既存の解決策を用いて解決することが出来ます。また、スキル不足の問題は、勉強したり練習したりしてスキルを習得すれば解決することが出来ます。
一方、「適応課題」は、当事者にとってその状況に“適応すること”が必要な問題であり、解決するためには自分達の“考え方”や“行動”を変えていく必要があるものです。
「適応課題」は、起こっている問題に対して、既存の解決策をそのまま用いるのではなく、“現状”と“自分達の前提(問題の捉え方や思い込み等)”について人々と探求し、どうすれば良いかを対話し、解決策をともに考えたうえで実行する必要があります。
ハイフェッツが挙げている例として、「高齢者が夜に車の運転をしていて、車を傷つけてしまった」というエピソードあります。
傷つけてしまった車を修理して直すことは「技術的問題」です。
一方で、高齢者が「夜に車を運転できなくなっている自分」と向き合い、運転を止めるとなると夜に車を運転してレストランにいけなくなるとともに、自分の一部である「運転ができる私」というアイデンティティを失うことになる、というのが「適応課題」です。
■組織マネジメントにおける注意点
ハイフェッツは、「リーダーやマネージャーが陥りやすい誤りは「適応課題」に対して、「技術的問題」の解決策を当てはめて解決しようとすることだ」と指摘しています
職場や組織で起こる問題は、何か一つの原因や誰か一人が原因で起こっているわけではなく、色々な要因が複雑に絡み合って生じている場合が大半です。
冒頭の友人の話も、単にコミュニケーションをする場や時間がないからコミュニケーションが少ないのであれば、朝礼や飲み会をするという「技術的問題」の解決策は有効でしょう。
しかし、それでは解決しなかったという事は、「適応課題」が含まれており、自分達の問題は何かを、皆で対話しながら気づき、解決策をともに考え実行していく必要があります。
皆さまの職場で起こっている問題はどちらでしょうか?
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