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連載コラム~目標達成し続けるチームづくり~【第11回】その制度はチームワークにつながるか

2019.6.12  チームビルディング

~目標達成し続けるチームづくり~
【第11回】その制度はチームワークにつながるか

■顧客満足度日本一の不動産会社

先日、ある大手不動産チェーンのフランチャイズとして数店舗を経営している、地方企業A社に訪問し、社長のお話を伺いました。
その不動産チェーンでは年に一度、お客様からのアンケートを集計し、顧客満足度ランキングを出して、表彰を行っています。
全国約3,000人の営業スタッフが表彰対象となるのですが、毎年TOP10にA社の社員が名を連ねており、1位から6位までを独占したこともあったそうです。また、来店されたお客様の契約率は、業界平均で50%~60%と言われていますが、A社では契約率90%以上の営業スタッフが数多くいるということです。つまり、A社の店舗に足を踏みると、殆どの方がA社と契約し、部屋を借りてしまうことになります。

そんなA社ですが、創業当初から順調なわけではありませんでした。始めは2店舗でスタートをしたのですが、実験的に、マーケットが小さい街の店舗には不動産未経験の社員を、マーケットが大きい中心街の店舗には経験のある社員を配置しました。しばらくして2店舗の業績を比較したところ、予想に反して両店舗の成績は殆ど変わらなかったそうです。

「なぜこのような結果になるのか?」と社長が現場を観察したところ、次のようなことが分かりました。
未経験者を配置した店舗では、スタッフ同士が分からないなりに協力し、知恵やアイデアを出し合い、笑顔で接客をしていました。しかし、経験者を配置した店舗では、業界の慣習に捉われて、競争意識が働き、スタッフ同士がギスギスし、イライラしながら仕事を行っており、徐々に社員同士が険悪になっていっていました。

■どんな会社にしたいのか、全員で考える

社長は直ちに「これではいけない」と考え、「どのような会社にしたいのか」、「そのためにはどうすれば良いのか」について何度も全社員と対話を重ね、会社の方針やルール等を決めました。
その中でも特に興味深いのが、お客様の満足度を最大化するために、「営業職のノルマ無し、歩合給無し」、「接客はお客様のためにチームで行う」というものです。

これは、同業他社では考えられないことです。他社では、各自が自分の成績を伸ばすために、良い物件情報があってもそれを他のメンバーに共有せず、抱え込んでしまうことが多くあります。また、お客様の共有はせず、接客は基本的に1対1で行います。

しかし、A社ではお客様と担当営業の会話を他のメンバーも聞いており、お客様のご要望に合う物件を即座に複数人で探すことで、お客様をお待たせすることなく、最適な物件のご紹介をすることが可能です。
また、お客様から連絡があった際に担当営業が外出中であっても、情報共有が出来ているため、すぐに別のメンバーが対応することができます。
 
このような接客を続けた結果、お客様に「このお店のスタッフは、皆で私のために物件を探してくれる」、「同じ物件であっても、他店ではなくこのお店で契約したい」と思ってもらえるようになり、結果的にメンバーが全国表彰の常連になるようになりました。

■仕組みがチームづくりを阻害していないか

個人の目標設定やインセンティブ制度(※)等によって、社員のやる気を引き出そうとしている企業は多くあります。しかし、業種業態によっては、それがチームワークを阻害し、意図したものとは反対の結果を生み出してしまうこともあります。

※インセンティブとは、直訳すると「動機・刺激・奨励」といった意味になります。ビジネスシーンで使われる場合は、仕事の成果に応じて支給される成果報酬(金銭的インセンティブ)や、表彰や人事評価(金銭以外のインセンティブ)などのことをいいます。

 
業界の常識等に捉われず、自社の評価や賃金の制度について、それがチームワークの向上につながるかどうか、という観点で見直してみてはいかがでしょうか。

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Author 執筆者

山下大輔

山下大輔

株式会社新経営サービス コンサルタント

大手教育会社にて数多くの講師登壇並びに人材育成に従事。 その後、事業会社の経営幹部として組織体制の構築や全国エリア統括として部署横断型のプロジェクトチーム立ち上げ等を経験。 「活気ある組織作りを基軸に中小企業を支援したい」との想いから新経営サービスへ入社。 単なる研修実施ではなく、経営課題の解決につながる人材開発・組織開発コンサルティングを心掛けている。