■生産性に関するホーソン実験
ホーソン実験とは1924年~1932年に生産性向上について調査するために実施された実験の総称です。当時約4万人が働いていたアメリカの大企業であるウェスタン・エレクトリック社というメーカーのホーソン工場で実施されたために、ホーソン実験と呼ばれています。
8年もの長きにわたって実施され、さまざまな条件下で労働者の生産性の変化についての仮説と検証が行われました。
実験が開始された当初は、「環境が生産性に影響を与える」と考えられていました。そのため、まず初めに照明の明るさによって生産性がどのように変化するかを調べる「①照明実験」が行われました。
よって、「証明を明るくすることによって生産性が向上する」という事前の仮説に基づいて、照明の明るさを変えながら、その下でコイル巻き作業の速度を測定しました。
常に明るい状況で作業するグループと、回数を追うごとに照明が暗くなるグループとにわけて実験を行いましたが、意外なことに照明が暗くても生産速度が上がっていたり、明るくても下がっていたりする等、照明の明るさと生産性には関連性が無いと結論づけられました。
さらにその結果をもとに、以下の3つの実験が行われました。
「②リレー組み立て実験」・・・労働条件と生産性の関係に関する実験です。被験者に対し、休憩時間や就業時間の長さ、部屋の温度や賃金等、様々な労働条件を変化させながら、生産性を測定しました。
しかし、労働条件と待遇の変化と生産性の変化には、一定の関係を見出すことはできませんでした。
「③面接実験」・・・個人の感情と生産性との関係性を調査するために、2万人を超える従業員に対してインタビューが実施されました。
その結果、職場環境よりも人間関係によって、個人の労働意欲が左右されることが分かりました。
「④バンク配線作業実験」・・・集団での作業に人間関係が影響するか否かを調べるために、電話交換機(バンク)の配線作業を共同で行わせ、その成果を調べました。
実験の結果、「生産性は労働者の能力よりも、意欲に左右される」、「良好な人間関係を築いている方がミスが少ない」ことが分かりました。
さらに、インフォーマル・グループ(非公式組織)が仕事への意欲ならびに生産性に好影響を与えていることが明らかになりました。
一連の実験から得られた結論をまとめると、以下のとおりです。
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①生産性向上に、物理的な労働条件はあまり関係ないと推量される
(但し、被験者に対して実験することを伝えていたことから、確かとは言い難い)
②職場において、良好な人間関係を築けている方が、成果があがる
③インフォーマル・グループ(非公式組織)が仕事のモチベーションや生産性に好影響を与えている
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■非公式な人間関係を作るサポートを行う
上記③のとおり、部や課などの会社によって決められた公式なグループだけではなく、他部署のメンバーや、たばこ部屋で話す同僚、部活動やサークル活動の部員等、非公式な人間関係が生産性に向上に繋がります。
しかし、コロナ禍によってリモートワークの社員が居たり、多人数での食事等が禁止されたりしている企業も少なくないことから、コロナ前よりもインフォーマル・グループが生まれにくい状況となってしまいました。
そこで、人事としては意図的に、インフォーマル・グループが生まれやすい環境やきっかけを作ることが必要となります。
例えば、同じ趣味や興味・関心を持つ社員を集めて、Zoom等で話す機会をつくる。そのメンバーでチャットルームを作って日常的に会話をさせる。
あるいは、毎月1回程度、全員がオンラインで集まり、何人かのグループに分けて近況報告等、雑談をする時間を設ける等です。
最近は、社員同士の関係性を向上させるために、以下のような野外研修を実施する企業も増えています。
https://skg-od.jp/service/program_soshiki_03_20/
電力不測のため、照明の明るさやエアコンの温度調節等の作業環境に目が向きがちではありますが、生産性向上のためにも、いかに社内の人間関係を良くするかに改めて注力してみてください。