2003年1月16日、スペースシャトルコロンビア号はケネディ宇宙センターから無事に打ち上げられました。
その翌日、打ち上げの映像をチェックしていたエンジニアの一人が、発射の際に燃料タンクの一部が剥落し、手提げ鞄ほどの大きさの破片が左翼を直撃しているのを発見しました。
そこで、上司に緊急調査の実施を依頼しましたが、上司から許可を得ることは出来ませんでした。
これまでの発射実験でも、剥落した物の衝突によって耐熱タイルが損傷することは何度か見られたものの、それによる問題は発生していなかったために、上司は「問題ない」として取り合わなかったのです。
そのエンジニアは大きな懸念を持ちつつも、その後の会議等でも意見を言うことは出来ず、押し黙ってしまいました。
しかし、その約2週間後に悲劇は起きました。コロンビア号が任務を終え、大気圏に突入する際の高温に耐えきれず左翼部分から火を噴き、空中分解し、7名の貴重な命が失われたのです。
その後の聞き取り調査の際、左翼部分の懸念について上層部にしっかりと打ち出せなかった理由について、エンジニアはこう答えました。
「上司の意に反してまで、上層部に意見を上げることはできませんでした。私がいるのはピラミッドのずっと下の方。そして、リーダーははるかに上ですから。」
これに近い話を顧客企業の社員から聞くことがあります。
「どうせ言っても聞いてもらえない」
「反対意見を言うと。自分がやり玉に挙げられる」
「社長に逆らった結果、パワハラを受けて退職した社員がいる・・・」
人間は不安と恐怖によって動きます。
しかし、それに味をしめ、不安と恐怖で社員をコントロールしようとすると、最悪の場合コロンビア号のような事件を引き起こしてしまいます。
そこまでではなくとも、社内での出来事がネット等で流れ、「ブラック企業」というレッテルを貼られたり、ニュースで取り上げられたりするリスクもあります。
このような企業では、当然社員の愛社精神やモチベーションも低く、生産性は上がりません。社員の生産性向上のためには、安心安全な場が必要です。
(【第8回】安心安全な場をつくる https://skg-od.jp/column/1455/ )
社内では、新人や若手が臆することなく意見を言えていますでしょうか。不安と恐怖のマネジメントを行っていないか、改めて確認してみてください。