「空・雨・傘」というコンサルティング会社のマッキンゼーが提唱した、問題解決のフレームワークがあります。
※フレームワークとは「思考の枠組み」のことで、物事を整理して考えるのに有効です。
※「雲・雨・傘」と表現する場合もあります。
「空を見上げると黒い雲がかかっている。雨が降りそうだから、傘を持っていこう」という、日常のよくある考え・行動から名付けられたフレームワークで、物事を「空」「雨」「傘」の3つに分けて整理することによって状況を俯瞰し、課題解決へのきっかけを見つけるために使われます。
また、他者に自身の考えを説明する際にも、この順番で説明することで、相手の理解を得やすくなります。
具体的には以下のとおりです。
1.空=事実
「空」というのは実際に起こっている事実です。
空を見上げると、「黒い雲がかかっている」、あるいは「西の空が暗くなっている」というのは誰が見ても同じ、客観的事実です。
2.雨=解釈
「雨」というのは解釈です。「空に黒い雲がかかっている」という事実を見て、「雨が降りそうだ」と、過去の経験や知識等を通じて解釈しています。
この解釈の部分は、人によって異なります。
「黒い雲がかかっているが、じきに通り過ぎるだろう」と解釈する人もいるかもしれません。
3.傘=解決策
「傘」は解決策を表します。空を見たら雲がかかっている。これは雨が降りそうだ。
だから「傘を持っていこう」という解決策を実行します。
解決策なので1つとは限らず、傘以外にも「自転車ではなくタクシーで行こう」、「長靴を履いていこう」等も考えられます。
一見すると単純な話のようですが、組織においてこの「空雨傘」を上手く整理できていないために、問題が起こることがよくあります。
実際に、ある企業でこのようなことがありました。
空(事実)=最近A君がよく遅刻をしてくる。また、業務においてケアレスミスが多い。
雨(解釈)=A君のやる気が低下している。
以前からよく飲みに行っているらしいし、二日酔いで仕事をしているのだろう。
傘(解決策)=真剣に仕事をするように、厳しく注意しよう。
しかし残念ながらその後A君は鬱になり、長期間の休職を余儀なくされました。
このケースでは、上司の雨=解釈が大きくズレていました。
実際にはA君はやる気があり、多くの業務を自ら引き受けてこなそうとしていました。
しかし本人の処理能力が追い付かず、持ち帰って夜中まで仕事をしていたために、寝不足が原因でケアレスミスをしてしまっていました。
また、「よく飲みに行っているらしい」というのも過去の噂話からの思い込みで、最近は全く飲みに行っていなかったとのことです。
このように、雨=解釈が間違ってしまうと、それに基づく傘=解決策も間違ってしまうことになります。
上記のケースでは、「最近、遅刻やミスが多いようだけど、どうしたの?」と声をかけ、仕事の状況をきちんと把握しておけば、
「業務を他の社員にも割り振ることで、A君の負担を減らす」、「A君の業務が円滑に進むように、効率的なやり方を一緒に考える」等で解決することが出来たかもしれません。
コロナ禍の影響により、テレワークを導入する企業が増えてきました。
社員の仕事ぶりが見られなかったり、コミュニケーション量が減ったりすることで、管理職が部下にについて「事実」をきちんと把握することができず、間違った「解釈」をしてしまうことが起こり得ます。
例えばある企業では、上司が部下のメール返信が遅いことに対して、「サボっているのでは?」と解釈してしまい、LINE宛に「今、何をしていますか?」、「仕事をサボっていませんか?」と毎日何度もメッセージを送ったことで、トラブルが発生しました。
しかし、実際には部下はきちんと仕事をしており、集中して仕事をしていたために、メールに気づかず返信できていないだけでした。
このような間違いを犯さないためにも、上司は部下の自宅での状況を可能な範囲でヒアリングしたり、短時間でも良いのでオンライン会議・面談等を用いて、コミュニケーションを図り、テレワークで困っている事や、その解決策を話し合ったりするのが良いでしょう。
このような状況だからこそ、「空・雨・傘」を意識したマネジメントを行ってみてください。
なお、「だったら、社員がPCの前にきちんと座っているのかチェックしよう」、「部下のPCの画面を上司がそのまま見られるようにしよう」等と監視を強化し、それを基に部下に注意するようなマイクロマネジメントを行うと、部下のやる気や生産性を下げることが、ビジネスパーソンを対象とした大規模調査によって、明らかになっていまので、ご注意下さい。
※“良いチーム”を創るための具体的な方法はこちらをご覧ください。
https://skg-od.jp/service/program_soshiki_03_20/