先日ある企業(以下A社と記載)にて、幹部の方から経営会議についての話をお聞きしました。
A社はここ数年、ある分野の商品群でトップシェアを取り続けているものの、市場自体が縮小しているために、売上が緩やかに右肩下がりになっていました。
そこで、どうすれば売上の低下を食い止めることが出来るのかについて、経営幹部で話し合いが持たれました。
しかし、会議スタート直後こそ意見が出ていたものの、15分後には発言する人がいなくなり、社長が「誰か他に意見はないか!?」と呼びかけるも、幹部たちは俯くばかりで誰も発言をしません。
会議は静かなまま時間だけが経過し、結局最後は社長の案で進めることになったそうです。
なぜこのような現象が起こってしまうのでしょうか。よくある例で説明します。
ある会議にて、参加者のXさんが「こんなアイデアはどうでしょうか」と発言しました。
それを聞いた上司は「それは無理だ。うちにはそんな予算は無いし、仮に予算があったとしてもそれを実行するノウハウも無いだろう」と否定します。
さらには、アイデアに対してだけではなく発言者のXさんに対して、「そんなことを言っているから、君はいつまでもうだつが上がらないんだ」と人格否定までしてしまったとします。
すると、参加者全員がアイデアを言わなくなってしまいます。そしてひたすら名案探しをし始めます。下手な事をいうと自分もXさんのように頭ごなしに否定され、皆の前で恥をかかされるかもしれないためです。
しかし、そう簡単に誰もが納得する名案がでてくるはずもありません。おのずと誰も意見が言えない「静かな会議」になります。
その結果、リーダーは一人で考え、一人で結論を出すしかなくなります。また、参加者の理解度や納得度は深まらず、計画は絵に描いた餅で終わることになります。
お気づきのとおり、上記の原因はせっかく出したXさんのアイデアを、上司が「否定」してしまったことです。
冒頭のA社においても同様に、社長が経営幹部の発言を否定したことから、静かな会議になってしまったのでした。
他人の意見をその場で否定・批判する人を「アイデアキラー」と呼びます。「アイデアキラー」が一人でもいると、そのチームや集団のメンバーは「否定されないこと」が第一優先になってしまい、斬新なアイデアが生み出せなくなってしまいます。
それでは、活発に意見やアイデアが出るような会議にするには、どうすれば良いのでしょうか。
それは、会議の時間をアイデアを出すだけの「発散パート」と、出たアイデアを絞り・磨く「収束パート」の2つに分けることです。
「発散パート」では30分等と時間を決めて、とにかくアイデアの数をたくさん出すことに徹します。そして、他者のアイデアに対しては一切否定・批判をせず、逆に「それは素晴らしいアイデアですね」、「斬新だね!もっとぶっ飛んだアイデアも出してみよう」等と誉めたたえるのです。
特にリーダーが率先して、一見的外れに思えるようなアイデアを出すことで、「こんなことを言っても良いんだ!」と、皆が意見を言いやすいムードができてきます。
実際にある企業では、「発散パート」で新しいネクタイのアイデアを1時間で880案出しました。
そして、そのアイデアを「収束パート」で実現可能性や差異性・市場のニーズ等の観点から絞り、さらに磨いた結果、7案が商品化につながったそうです。
貴社の会議は「静かな会議」になっていないでしょうか。もし該当するのであれば、上記の方法を取り入れてみてください。