■心理的安全性とはぬるま湯なのか?
2015年にグーグル社が「パフォーマンスが高いチーム」の特徴を分析し、発表しました。その第一の特徴が「心理的安全性が高い」ことだったため、それ以来「心理的安全性」という概念が、経営者や人事部門の社員等、組織運営に関心が高い人達の間で広まることとなりました。
この「心理的安全性」という概念については、「ぬるい職場になってしまうのでは?」等、本来の意味とは少し違った形で理解されていることがあります。
この概念を提唱したエイミー・エドモンドソンさんの著書によると、「心理的安全性が高い状態」とは、例えば空気を読まずに周りと異なる意見を表明したり、仕事上でのミスを告白したりと、自分自身の評判を落とすリスクとなるような行動を取ったとしても、「それによって自分が傷つけられたり、不利になったりすることはない」と信じられる状態です。
詳しくは【第12回】心理的安全性の誤解(https://skg-od.jp/column/1741/)をご覧ください。
では、なぜ心理的安全性が高い状態であることが重要なのでしょうか。
■医療現場での心理的安全性
例えば、医療現場では一般的に、医師の指示を看護師が遂行します。仮にまだ若手の看護師が、患者への投薬指示を見て「投薬量が通常よりも多いかも・・・」と違和感を持ったとします。その際、「私はまだ経験が少ないし、先生がこう決めたのだから、そのままの量で進めよう」と考えるのが自然な状態ではないでしょうか。
しかし、心理的安全性が高い状態であればその違和感を放置せず、看護師から医師に確認するでしょう。そして医師も「確認ありがとう」と受け止め、万が一医師自身の判断ミスであった場合は、潔く誤りを認めるでしょう。
逆に、もし心理的安全性が低い状態であれば、看護師は医師に投薬量を確認することなく患者に投与してしまい、重大な医療ミスにつながっていたかもしれません。
メンバーが職場の心理的安全性が高いと感じるかどうかは、上記の医師のように、職位や立場が上の人間が、相手に発言を促したり、自分と異なる意見に耳を傾け、受け止めたりできるかどうかにかかっています。
特にお互いの経験や知識を活用し、臨機応変な判断が必要とされるような業務においては、個人の思い込みによるミスを減らしたり、より良い方法を生み出したりするために、心理的安全性が不可欠となります。
もし日常の業務において、あるいは会議などの場において、メンバーからの意見が少なかったり、上位者の意見がそのまま通ったりするような状態であれば、「心理的安全性が低いのかも?」と疑ってみてください。