■相手の存在を認める「ストローク」
パソコンの 画面見ながら 若き医師 心配なしと 顔向けずに言う
(NHK歌壇 2003年7月号より)
この短歌からは、「医師が関心を持ってきちんと自分を見てくれない」という、患者の寂しい気持ちが伝わってきます。イジメにもよく出てきますが、存在を無視されることは人間にとってとても辛く、悲しいものです。
交流分析(※)では、相手の「存在を認めること」を「ストローク」と言います。
人は誰でも「無視されたくない」、「自分の存在を認めてほしい」という基本的な欲求を持っています。職場に限らず様々な組織において「コミュニケーションが大事だ」と言われる理由の一つは、コミュニケーションが相手の存在を認める「ストローク」であるからです。
「ストローク」には、相手を肯定的に認める「ポジティブ・ストローク」と、相手を否定的に認める「ネガティブ・ストローク」の2種類があります。そして、当然ですが、人は誰でも「ポジティブ・ストローク」を望んでいます。
具体的には、相手を誉める、感謝する、贈り物をする、信頼して任せる、期待する、笑顔を向ける、握手をする、等は「ポジティブ・ストローク」です。
一方、批判する、非難する、悪口を言う、怒鳴る、舌打ちする、しかめ面をする、等は「ネガティブ・ストローク」にあたります。
そして、最もダメなのは「ノー・ストローク」=「無視」をすることです。
もしチームの中に、一言も言葉を交わさないメンバーがいるのであれば、それは「ノー・ストローク」を行っていることになるため、注意が必要です。
■ハートビーイングを活用する
チームづくりにおいては、メンバー同士が「ポジティブ・ストローク」を多く行うことが非常に重要です。
しかし、重要性は理解していても、中には口下手であったり、照れ屋であったりして、なかなかうまくポジティブな言葉が出てこなかったり、行動が出来なかったりする人もいます。
そのようなメンバーがいるチームのために、「ハートビーイング」というワークを紹介します。
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①チームのメンバーそれぞれに白紙を配ります。
②白紙の真ん中に、紙の半分程度の大きさのハートを描きます。
③各自が「されたり、言われたりすると嬉しいこと」をハートの内側に、逆に「されたり、言われたりすると嫌なこと」をハートの外側に書きます。
④書き終わったら、順番にその内容を発表していきます。
⑤全員の発表が終わったら、大きめの白紙を用意し、各自の発表内容を 踏まえて、チーム全員の「されたり、言われたりすると嬉しいこと」をハートの内側に、逆に「されたり、言われたりすると嫌なこと」をハートの外側に書きます。
⑥ハートの内側に書かれたことを、日常的に行うことをチームのルールとします。
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これを行うことで、具体的に何をすることが、メンバーに対するポジティブ・ストロークとなるのかが明確になり、実行され易くなります。
そして、ネガティブ・ストロークが減り、ポジティブ・ストロークが多ければ多いほど、チームづくりで重要な「安心・安全な場」が出来ていきます。
ご自身のチームでは、日頃どのようなストロークが行われていますか?
まずは一度、チーム内のストロークをじっくりと観察してみてください。